『やられたらやりかえしましょう』








 「せ、刹那ぁぁぁぁぁぁ!!」


 三人の中で一番過保護な男の叫びに刹那は眉を寄せて耳をふさいだ。三人は皆刹那に甘い傾向にあるが、この男は特にそうだ。


 そんな、目に入れても痛くない? ほど可愛がっている刹那が、突然傷だらけ泥だらけのぼろぼろで帰宅したのを見て冷静でいられるはずもなく。


 「ど、どうしたんだその傷!? 転んだ・・・わけないよな。誰かにやられたのか!?」


 「落ち着けロックオン。アレルヤは急いで救急箱を持って来い。刹那はそこのソファーの座っていろ。泥を落としてやる」


 うろうろとうろたえるロックオンとは正反対に、冷静に指示を出したティエリアは、キッチンでタオルを濡らすと、刹那の顔や腕や膝などに付着している泥を拭い取った。


 アレルヤが持ってきた救急箱から必要な物を見繕ってテキパキと手当てをしていく。消毒液が傷口を濡らすたびに、刹那が痛そうに眉を寄せたが、とりあえずは無視。


 「これで終了だ。で、何があったか言えるな?」


 「・・・・集団で取り囲まれ金品を要求された」


 つまりはカツアゲされたと。


 どこの町にでも一つや二つは生息しているであろうグループから見れば、一人で歩いている少女は絶好のカモだったのであろう。むしろ、金品を強奪されただけですんでよかったのかもしれない。


 うつむいていた刹那は毅然と顔を上げると、隣で心配そうな顔をしていたアレルヤの髪を引っ張った。


 「いたっ。痛いよ、刹那」


 「アレルヤ。ハレルヤに代わってくれ」


 ぐいぐいとアレルヤの右目を露にしようとする刹那に、一瞬驚いたような顔をしたものの、アレルヤは大人しく引っ込んだ。


 「何のようだ、チビ?」


 「チビじゃない。ハレルヤ、自分より身体が大きい敵に集団で襲われたときの対処法を教えてくれ」


 いくら刹那がそんじょそこらの女の子より強かろうと、自分よりもはるかに体格が良い相手(しかも複数)では勝ち目はない。今回の事件は、刹那の弱点でもあるそれが露になったもの。CBとして活動するのだったら、それくらいの弱点は克服しておかなければならない。それに、


 「やられっぱなしなのは・・・・嫌だ」


 意外と負けず嫌いな少女の呟きに、「それでは僕も参加しておこう。ここのところ身体を動かしていなかったからな」 「よっし、ひさびさにやるか!」 と各々立ち上がる。







 その後、この町の不良グループの一つが何者かによってボコボコにされたという噂が瞬く間に広まったと言う。









 やられたらやりかえす


 これ、教訓です








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