変わらない朝。変わらない空。変わらない、毎日。


  いっそ壊れてくれたほうが、清々しくていいかもしれない。


 刹那・F・セイエイはベットの上で、毎日同じことを思った。


 刹那は俗に言う『お嬢様』である。


 父親は昔から栄えていた商人の跡取りであり、母親は少し没落したとはいえ、立派な貴族の娘だ。そんな二人から生まれたのが刹那である。


 他人の目から見れば、絵に描いたような、幸せな家族なのだろう。


 刹那が、望まれて生まれていた子であれば。






 刹那は生まれつき身体が弱く、二十歳までは生きられないだろうと診断されていた。


 それに加え、両親はお家事情とやらで男の子を望んでいたのだ。


 それゆえ、女でしかも病弱というマイナス材料を持って生まれた刹那を歓迎しなかった。


 父親は刹那が寝込むたびに母親を責め、母親は刹那に辛く当たった。


 数年前に療養のため、という名目で郊外の森の近くに屋敷を建て、そこに刹那を放置したまま、二人とも刹那に会おうともしない。


 刹那も、幼い頃から自分の境遇がどのようなものであるか理解していたため、喜んでこの屋敷の移り住むことを了承した。


 数人の世話係りと定期的にやってくる主治医、それが寝たきりの刹那と接する『外の世界』だった。