「刹那、これやるよ」
ロックオンに渡されたそれは銀紙に包まれた、細長い長方形。
「…何だこれは」
渡された長方形は軽く、厚さも薄い。
「チョコレートだよチョコレート。お前も食べただろ?バレンタインの時に」
ロックオンに云われ、ああと理解する。2月14日にスメラギ達からもらったあれは、とても甘ったるかったけれど美味しかった。
「…何故これを俺に」
「いやぁ、俺もティエリアもチョコ食わないし、アレルヤも甘いもの苦手だって云うからさ。刹那は好きだろ、チョコレート」
「…俺は好きだと云った覚えはないが」
「俺知ってるぜ。バレンタインの時すっげぇ美味そうに食ってたの。お前、見かけによらず甘いもの大好きなんだもんな」
その時の様子を思い出したのか、ロックオンがニヤつきながら云った。
絶対に、という訳ではないが、知られたくない事を知っているロックオンに無性に腹が立った。
「ほら、食べてみろよ。これ結構高級品なんだぜ」
悔しい気持ちではあったが、久し振りのチョコレートはとても美味しそうで。
バリバリと銀紙を破り、口に含みパキリと割る。
しかし予想とは大きく違い、口に広がった苦味に盛大に顔を顰める。
「…苦い」
「あれ、お前さんビターチョコ駄目だったか!?…あー、そういやお前コーヒーも飲めないもんなぁ…」
「飲めないわけではないが好きではない」
口に残る苦味を消す為水を飲もうとキッチンに向かう。
「あ、じゃあホットチョコレートにしてやるよ!砂糖沢山入れたらきっと飲めるだろ」
「…ホットチョコレート?」
聴きなれない言葉に首を傾げる。ホットチョコレート…直訳すると「熱いチョコレート」。…何だそれは。
「出来てからのお楽しみだ、刹那。…でもその前に」
ふとロックオンが真面目な顔で見つめてきた。
「口直しはこれで勘弁な」
ロックオンが低く屈んだと思うと。
軽く。額に触れられたそれは、ロックオンの唇だった。
「な!何をするんだ!!」
キスされた箇所を押さえ怒鳴りつけると、ロックオンはニヤニヤと笑った。
「あー、駄目だ。お前なんでこんなに可愛いんだ!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるロックオンから逃れようともがくが、力では叶わない。
その間もロックオンはキスを雨をいろんな箇所に注ぐ。
嗚呼全身がとても熱い。きっと耳まで真っ赤だ。
いつの間にか抵抗も忘れ、俺はただロックオンの熱い唇を受け止めていた。
苦かった口内が、こんなに熱く、甘くて蕩けてたのは、きっとお天気のせい。きっと。
孤独を纏うの帳サハラ様より強奪してきました。
甘々で癒されます〜