ロックオンと刹那が恋仲なのはトレミー内ではすでに有名だ。


 なにせ、幸せの絶頂にいるロックオンが所構わずに(時には刹那の意思すら無視して)イチャつきまくったのだから。


 生業としているものがものだからか、CBには恋人を持っている者は少ない。そんななかで幸せオーラを振りまけばどういうことになるかというと。


 こうゆうことになるのである。











 「刹那ー」


 語尾にハートマークがでも付いていそうな感じの声と共に自室に入ってきたロックオンに、振り返った刹那は眉を寄せ、一緒にMS雑誌を読んでいたアレルヤは苦笑いを浮かべた。


 「何のようだ?」


 「や、なんとなく刹那に会いたいなーと思って」


 刹那の眉間のしわが深くなった。刹那は瞬時に脳内からロックオンを消去し、アレルヤに向き合う。


 「これが前に言っていた物だ」


 「ありがとう、刹那。いつ返せばいい?」


 「いつでも構わない。俺はもう読み終えたから」


 そんな仲良こよしな会話を、ロックオンが面白く思うはずもなく。


 「せーつーなー」


 後ろから覆いかぶさるように抱きしめると、顔に肘を打ちつけられた。


 「アレルヤ、資料室にまだあったからとってくる。ロックオンは速やかに消えろ」


 そういって出て行った刹那に「愛が足りないぜー」と呟きながらも、ロックオンは出て行こうとしない。


 「ロックオン・・・・・少しは刹那の機嫌とかも考えたほうがいいんじゃないですか?」


 「刹那、人前ではああ言ってくるけど、二人っきりのときはむちゃくちゃ可愛いんだぜー。ま、普段から可愛いんだけど」


 いい年した大人が頬を緩めて惚気る姿は、はっきり言ってキモい。


 「ケッ、自慢してんじゃねーよ。オッサン!!」


 「ハ、ハレルヤッ!?」


 むくりと起き上がった男の、金色に輝く右目に睨まれてロックオンは後ずさる。


 「ったく、毎日毎日刹那刹那うっせーな。そのうちウザがられてふられるぜ」


 「ひがむな、童貞」


 「ああっ!? 今なんて言った!?」


 ロックオンのささやかな反抗に、ハレルヤはキレた。ゲシゲシと一方的にロックオンを蹴りまくる。


 「いでっ!! ちょ、やめろハレルヤ! アレルヤもハレルヤをとめろ」


 『そうしたいのはやまやまなんですけど、ハレルヤに完全に乗っ取られちゃってー』


 アレルヤの声がロックオンに聞こえるはずもなく。


 結局、戻ってきた刹那がきょとんとした顔で「何をしているんだ?」と訊くまで、その一方的な戦いは続いたのだった。











 「いでで・・・・・ハレルヤのヤロォ、マジで蹴りやがって」


 蹴られた箇所に絆創膏うを貼るロックオン。救急箱を片付けている刹那は何をしていたんだ? と呆れ顔だ。


 ぶつぶつと愚痴るロックオンの背中に、柔らかい感触がした。


 「刹那?」


 「ロックオン、アレルヤと楽しそうだったな」


 背中に顔を押し付けるように抱きつかれているため、刹那がどんな顔をしているのか見えない。


 (や、あれが楽しいそうに見えたのか・・・・)


 本気で言っているのだとしたら、刹那を眼科に連れて行かなくてはならない。


 「楽しそう、だった・・・・」


 繰り返し呟く刹那と向き合い、抱きしめる。


 「嫉妬してくれたんだ、刹那は」


 「っ!!」


 睦言を呟く時と同じように耳朶に触れるか触れないかの距離で囁けば、刹那は顔を真っ赤にしてロックオンを睨みつける。


 (そんな潤んだ目で睨まれてもなぁ・・・・)


 可愛さが倍増しているだけで効果がない、ということに気付いているのだろうか。


 ま、とりあえず今日は誤解を解くのが先。


 ロックオンはひょいと刹那をお姫様抱っこすると、暴れる刹那をキスで黙らせ、そっとベットに運んだ。


 「愛しているよ、刹那」







 君が望むなら、何度だって囁いてあげるから。