西校舎の窓から下を覗けば、若い男女が向かいあって立っていた。制服の色から見て女のほうが先輩、男のほうが後輩といったところだろうか。


 普段あまり人が来ない西校舎の、さらに人が寄り付かない校舎裏で男女が何するって言ったら、たぶん一つしかない。案の定、聞こえてくる会話は俗に言う『告白』というものだ。


 (わーあの子泣いちゃってるよ)


 ふられた女は泣き始めたが、男のほうはさっさと帰り始めた。実に彼らしい行動だ。


 (あ、ヤベ)


 視線を感じたのか、男が窓に視線を向けた。慌てて身を隠して・・・・しばらく経ってから窓を見ると、そこにはもう男の姿も女の姿もなかった。

















 昼休み、いつもどおりにロックオンが屋上に顔を出すと、律儀にロックオンが来るまで弁当を食べずに待ているアレルヤとそんなこと関係ないと言わんばかりに弁当を咀嚼している刹那がいた。


 「刹那〜 普通全員そろうまで待たねぇ?」


 「アンタが来ようが何しようが、俺には関係ない。腹が減ってたんだ」


 「一応5分くらいは刹那も待ってたんですけどね・・・・」


 アレルヤも苦笑で応じる。ロックオンもいつものことだと、そんなには気にせず弁当を広げ始めた。


 「そーいや、刹那、この前上級生の女の子に告白されてただろ?」


 「やっぱり、あの時の視線はアンタか・・・・」


 「や、偶然だって。たまたま西校舎に用があって行ったらさー」


 「ロックオン・・・そういうのを『のぞき』って言うんですよ」


 「いーじゃん。で、刹那はなんで毎度毎度断るんだよ?」


 おっさん臭い笑みを浮かべてロックオンが訊く。別に刹那が女子生徒から告白されるのは珍しい事ではない。歳の割りに幼い顔立ちが可愛いのだと、上級生の間では人気だ。


 もぐもぐとサンドイッチを胃に押し込んでいた刹那は、最後の一切れを飲み込むと立ち上がった。


 「・・・・だから」


 「は?」


 「俺より背が高いのは嫌だから」


 飲み物買ってくる、と言い残して行ってしまった刹那の背をいつまでも呆然と眺めていたロックオンに、アレルヤが恐る恐る尋ねた。


 「ロックオン・・・・今のところ、刹那との身長差はどれくらいですか?」


 「・・・・・聞きたいか?」


 「・・・・・いえ、遠慮しておきます」


 全身から負のオーラを出し始めたロックオンに、唯一ロックオンの気持ちを知るアレルヤは、慰めるかのようにその肩を叩いた。











 どんなにくだらなくたって、恋する者にとっては生きるか死ぬかの問題なんです!