もしも、私の願いが叶うのなら。


 彼の傍で眠らせてください。








 無数の煌く星を綺麗だと初めて思った。今までもコックピットから星を眺める機会はあったけれど、何回見たってそれはただの無意味な煌きでしかなかった。


 「・・・・っは」


 笑おうと息を吐いて、刹那の口からこぼれたのは意味を持たない吐息と鮮血だった。ダブルオーガンダムの、所々破壊されたコックピット内に紅い雫が浮かぶ。


 身体が思うように動かなくて、酷く滑稽だと思った。腕を持ち上げる事すら、満足に出来ない。


 「・・ニー・・・・ル」


 彼の名を呼んだ。この宇宙のどこかをさまよっているであろう、彼を。


 「俺たち・・はやったぞ。世界が変わるか・・・分からないが、出来るだけの・・・ことは、やった」


 厳しかったアロウズとの戦闘で、他の仲間ともトレミーともはぐれてしまった。でも、もいい。もう全て終わったのだ。


 「もう、そっちへ・・・・いっていいか・・・ニール」


 視界が霞んできた。煌く星々もはっきりと見えない。ぼやける視界を閉じ、刹那はそこに彼の姿を浮かべた。利き目を負傷してもなお、世界を狙い撃つと宣言した男の姿を。


 「すまな・・い。ずいぶんと・・・・待たせて・・しまった」


 全身の力を振り絞って、刹那は右手に力を込めた。握っているのは、彼の愛器であったデュナメスに搭載されていた標準システムのパーツだ。彼の形見だ。右手にその存在を感じて、刹那は歓喜の吐息をもらした。


 さぁ、目を閉じて。彼に会いに行こう。





 Beautiful world


 (眠るのなら、アンタの隣がいい)














宇多田ヒカルの『Beautiful World』をイメージして作りました。