開口一番、ごめんね、と謝られて、刹那は彼の喪失を知った。


 もう、何も喪いたくなかったのに。








 I was not hearing good-bye








 「刹那、泣かないで・・・・」


 アレルヤは悲しげに目を伏せながら、目の前の女性に言った。四年ぶりに会った彼女はもう立派な女性へと変貌していた。大人びた、それでもどこか昔の面影が残る顔に涙が伝う。


 ゆっくりと伸ばされた刹那の手がアレルヤの頬に触れ、そして右目に触れた。何度も何度も。まるで『彼』をいとおしむように。


 「ごめん、ごめんね、刹那」


 「・・・・・謝るな。アレルヤが謝る必要はない」


 「でも・・・・」


 震える刹那の肩を抱きたい衝動に駆られたが、理性を総動員してこらえる。この身体を抱く権利があるのは、自分ではないのだ。


 「謝るな、アレルヤ。アレルヤが謝ってもあいつは帰ってこないし・・・・それに、嬉しいんだ」


 「え・・・・・」


 「アレルヤだけでも、生きていてくれて。二人とも喪っていたら、俺は・・・・」


 「刹那・・・・・」


 怨まれていると思った。だって、『彼』は消えてしまったのに自分は生きている。自分が消したようなものだ。もっと早く、自分が生き残るために戦い抜く決意をしていれば。


 恐る恐る、刹那の華奢な身体に触れる。刹那からの拒絶がないと知ると、こんどは力を込めて。


 「刹那、ハレルヤがね・・・・・ぼくに『先に行っている』って言ったんだ」


 「・・・・そうか」


 「刹那、泣きたいなら泣いていいよ」


 「何を・・・」


 アレルヤはふわりと微笑んで刹那の頭を撫でた。そうされるだけで、刹那はもう何も言えなくなってしまう。刹那はぼすっとアレルヤの胸に頭を寄せた。


 「・・・・あいつは、アレルヤにはさよならを言ったんだな」


 「・・・・そうだね」


 「・・・・・そんなの、ずるい・・・」


 ぽつりと呟かれた言葉にアレルヤは目を丸くすると、優しく刹那の頭を撫でた。











 (さよなら、なんて聞いてないわ)


 (貴方は黙って私の前からいなくなるのね)