自分は、なんて愚かな存在なのだろうか。
己に刻み付けた生き様すら、出来ないなんて。
「あ、刹那」
「アレルヤ・・・・・・・」
「探したよ、急にいなくなるんだから」
苦笑しながらこちらに近づいてくる男に、刹那はぼんやりと反応を返した。いつもなら、彼が自分を気にかけてくれた、その事で喜びがあふれてくるはずなのに。
今はただ、頭がいっぱいだった。
助けられなかった少年達。六年前、刹那がガンダムに助けられた時と同じ状況で。
刹那は、救うことが出来なかった。
ただ、破壊する事しか出来なかった。
ガンダムに、なれなかった。
「刹那、大丈夫?」
アレルヤの心配そうな声で、刹那の意識は覚醒した。
「ミッションで何があったのか、僕には分からないけど・・・・・」
元気を出して、と彼は刹那の頭を撫でた。
その感触が、欲しくて。
刹那は勢いよくアレルヤに抱きついた。
「せ、刹那・・・?」
「・・・・・もう少し」
アレルヤの胸元に顔を押し付けて、刹那は消えてしまいそうな声で言った。
「もう少しだけ・・・・・このままで」
服越しに伝わってくる彼のぬくもりを、刹那は心の底から愛しいと思った。母親を呼ぶ子のように、何度も彼の名を口にしてはすがりつく。
アレルヤも恐る恐る、その華奢な身体に腕を回した。そうする事で、少しでもこの少女が安らげば、思った。
ロックオンは走っていた。別に目的地があったわけではない。だから、逃げ込むように飛び込んだ場所が自分の部屋だったのは幸運だったのだろう。ベットに倒れこみながら、息を整える。
頭が、ガンガンしてまともに働かない。
「あ、う・・・・・」
刹那、と。
いつもなら優しく呼べるその名を、かすれた声で呟いた。何度も、何度も。
見てしまった光景が脳裏に焼きついて離れない。
自分の胸の中で渦巻く激情に焼け死んでしまいそうだ。否、死ぬのではない。
殺して、しまいそうだ。
刹那に触れる男全員を。
「・・刹那・・・・刹那」
苦しくて、つらくて、救いを求めるかのようにロックオンは何度も呼んだ。
彼女が答えてくれる事はないと、知っていながら。
この感情は、殺意に似ている。
触れる者全てを、殺してしまいそうな。
だけど、これは殺意ではない。
殺意に酷く似ていて、けれど違う、この感情の名前は。
そう、これは『嫉妬』。