「よし、上出来。さすが俺」
そう呟くと、ライルはしみじみと目の前の少女を見つめた。
今人気なのだと店員が言っていたアイボリーの布地に流れる桔梗がなんとも可愛らしい。本人にきつい苦しいと文句を言われながらも強引に巻いたピンクの帯はすっきりとした上品さをかもしだし、少女の魅力を存分に引き出してくれたようだ。結うには短すぎる黒髪には牡丹をあしらった髪飾りをつけた。
「ほんと、可愛いよ。刹那」
にっこりと破顔して刹那の額にキスを落としたライルとは裏腹に、浴衣姿の刹那はげっそりとやつれて見えた。
それもそのはず。朝から町中の着物屋を巡らされたうえに、こんなきつくて苦しい服装を強いられたのだから。刹那でなくとも嫌な顔をするだろう。
「ライル、この格好に何の意味があるんだ」
「だって今からお祭りに行くんだろ? 日本でお祭りに行くときは浴衣を着なきゃいけないんだよ」
「そうなのか?」
「そうなの」
哀れ、何も知らない刹那はそうして狡賢い大人にだまされいくのだった。
「お、刹那可愛くなったなー」
「そうだろ。何せこの俺が選んで着せたんだからな。感謝しろよ、兄さん」
ライルと全く同じ顔をした男、ニールは偉そうに胸を張るライルに「するする」と適当な返事を返しながら、きょとんとした顔をした刹那の唇に吸い付いた。
「んー刹那、すっげぇ可愛いなぁ」
「ン・・ニール」
ちゅっ、ちゅっ、と顔中にキスの嵐をふらせていると、くすぐったかったのか刹那は顔をそらした。その動作さえも可愛らしくて愛しい。
「兄さんだけはずりーぞ」
「ひっ・・・・ライ、ル」
少し拗ねたような顔なライルが刹那の首筋へと吸い付く。強く吸えば紅色の所有痕がくっきりと残り、少女に艶やかな色香が漂う。
「ん・・・・刹那は甘い味がする。なんでだろうな?」
「する、か・・・・・馬鹿ライルっ」
「俺も刹那は甘いと思うけどな」
「ニールまで・・!」
いつのまにかソファーに押し倒され、双子によってキスの雨を降らされている。なんだか怪しい雰囲気になり始めた現状に刹那は慌てた声を出した。
「おい、お祭りに行くんじゃなかったのか!?」
「あーそいうやそうだっけ」
「でも俺はお祭りより刹那だなー」
「俺も。じゃ、いっか」
「俺はよくないっ」
ごそごそと胸元を漁りはじめたニールには拳骨を、押し倒された事によって露になった太ももに所有痕を付けまくっているライルにはキックをくらわせて、刹那は大声で叫んだ。
「林檎飴が食べたいんだ! 射的がやりたいんだ! 水風船ヨーヨーが欲しいんだ!」
「分かった分かった。後で用意するから」
「だから今はこのまま進んじゃっていい?」
顔を覗き込んで笑う双子に刹那は深ーいため息をつきながら。
「最後まではしないからな」
「「りょーかい」」
キスと愛撫の嵐に身をゆだね、瞳を閉じたのだった。