その場には得も言われぬ圧力が満ちていた。部屋のイスに足を組んで腰掛けているのは刹那だ。今の彼女からは、その場にひれ伏さなくてはいけないような迫力があった。


 そして、そんな彼女の前に正座している三人の男。三人とも気まずそうにうなだれている。言わずと知れた、マイスターの三人である。


 「俺は何度も言ったよな? ヤるんだったら避妊はしっかりしろ、と」


 背景にゴゴゴ・・・という効果音を背負っていそうな迫力で問う刹那に、三人とも頷くしかなかった。


 「・・・・・・どうしてくれるんだ、この状態を?」


 突きつけられた紙には、患者・・・刹那が胎児を妊娠しているとはっきりと記してあった。


 「毎晩毎晩腰が痛くなるまで・・・・少しは自重しろ、この馬鹿共がっ!


 刹那の怒鳴り声からわかるように。


 毎晩毎晩入れ替わり立ち代りこの三人と夜を過ごした(過ごす羽目になった)刹那は、先日の健康診断で妊娠という診断を下されたのだ。


 結果、当分の間愛機から離れて地上で暮らす事となった刹那の怒りはそれはもうすさまじいものとなった。


 「おかげでエクシアと会えなくなった・・・・」


 「それは・・・・ごめんなさい」


 「相変わらず、物事の判断基準がガンダムなのか・・・」


 「いいじゃねぇか、ティエリア。刹那らしいし・・・」


 ぶつぶつと呟いている刹那をよそに、ぼそぼそと話す三人。


 「で、刹那。その・・・・・父親は誰だか分かったの?」


 恐る恐る尋ねたアレルヤの疑問に同意するかのように、ロックオンとティエリアも刹那を見る。


 「いや、それを解明させるつもりはない」 


 なぜ? と三人が口をそろえて訊いた。DND検査などをすれば簡単に分かるだろうに。


 「俺は三人の中から一人だけなんて選べない。・・・・ダメ、か?」


 「「「刹那・・・・・」」」


 大きなその瞳で見つめられて、落ちない男がいるはずもなく。もとより刹那にぞっこんの三人が否と言うはずもなく。


 「刹那の子か・・・・きっと可愛いだろうね!」


 「男の子か? 女の子か? なぁ、名前どうする?」


 「それよりもこのメンバーで子育てが出来るかどうかが怪しいな」


 すっかり父親気分の三人を見つめながら、腹部を撫でた刹那はゆっくりと微笑んだ。














 その後、刹那が望んだどうり母親そっくりに生まれた子は、三人の父親と最強の母親に愛されて育ったという。