『雪みたいに死ねたなら』 ニル刹











 結露で濡れた窓に雪が張り付いていく。白く曇ったガラスでは外の景色は見えないけれど、きっと外は凍えるくらい寒いのだろう。窓を拭った俺の手は、汗で濡れていた。


 「せつ・・な?」


 「すまない、起こしたか?」


 隣で眠っていたロックオンがむにゃむにゃと解読不能な寝言を呟きながら、俺を抱きしめた。俺もロックオンも汗だくで、抱きしめて眠るには不愉快だろうに。でもロックオンは幸せそうな顔で、俺を抱きしめる。


 (暖かい・・・・・)


 彼の体温と俺の体温が混じり合って、なんて暖かいのだろう。生きている、人間の体温。外はあんなにも、冷たいのに。


 俺を抱きしめるロックオンの腕を枕代わりに、俺は瞳を閉じた。暖かい。彼はこんなにも、暖かい。


 (いっそのこと)


 窓に張り付いた、雪のように。水滴と混ざって、流れていく雪のように。


 (お互いが分からなくなるくらい、どろどろに)


 溶け合って、混ざり合って。そんな風に、なれたのなら。


 (それは、とても)


 なんて幸せな、死なのだろうか。





 


 (溶けてしまいたい) (一つになって、絶対に離れたくない)











 お題はAコースさんよりお借りしました。














 『だってきみが好きなんだもの』 アレ刹








 その手を心地良く感じ始めたのはいつからだっただろうか?


 何をするでもなく、アレルヤは俺を膝に乗せている。俺はテレビを観ているから退屈しないが、アレルヤは暇ではないだろうか。というか、俺なんかを膝に乗せて何が楽しいんだ?


 「アレルヤ」


 「ん、何?」


 アレルヤは楽しそうにニコニコ笑っている。何がそんなに楽しいのだろうか?


 「アレルヤはなぜ俺に触れたがる?」


 「あ、ごめん。嫌だった?」


 俺が指摘すると、アレルヤは俺の腰に回していた手を離した。別に嫌ではなかったのだけど。体温が離れていった腰が、なんとなく寂しい。


 「別に嫌ではない。なんとなく、訊いてみただけだ」


 「あ、良かった」


 アレルヤはほっと息を吐き、再度俺の腰に手を回した。そのまま俺をぎゅぅっと抱きしめる。


 「僕が君に触れるのはね、僕が君のことが大好きだからだよ」


 「・・・それだけか?」


 「うん。だって好きな人にはずっと触れていたいものでしょう?」


 俺には良く分からないが、へにゃりとアレルヤが幸せそうに笑っているから、そうなのだろう。


 好きな人には触れていたい・・・・なら、俺は。


 俺は腰に回っているアレルヤの手に、自分の手を重ねた。手のひらからじんわりとアレルヤの体温が伝わってくる。


 「刹那・・・?」


 「好きな人には、触れていたいものなんだろう?」


 ぼそり、と囁くと、アレルヤはそうだねと笑って俺を抱きしめた。俺よりはるかに体格の良いアレルヤに抱きつかれると少し苦しいけど、嫌ではないから。


 暖かいその腕は、とても心地良かった。





 








 お題は群青三メートル手前さんよりお借りしました。