食堂に入ったアニューはやっと見つけられた探し人に安堵の息を吐いた。手に持っている小箱を確認すると、できるだけさりげなく近づく。
「刹那、ちょうどいいところにいました。これ、食べませんか?」
「アニュー?」
きょとん、と目を丸くした刹那だが、アニューが持っている小箱が菓子の箱だと分かった瞬間目を輝かせる。
「・・・・いいのか?」
「ええ、構いませんよ」
(・・・可愛いなぁ)
了承を得た瞬間、嬉しそうに菓子に飛びつく刹那が可愛くてならない。わざわざ地上に降りてまで購入したかいがあった。はぐはぐと菓子に食いつく刹那にアニューが癒されているときだった。
「お、刹那うまそーなもん食ってんじゃん」
「・・・・・ライル」
突如として現れた邪魔者に、アニューは舌打ちをもらした。もちろん、刹那には聞こえないように小さく。
「あら、いいんですか、こんなとこにいて。仮想訓練所でティエリアが探してましたよ」
「厳しい教官殿にしごかれんのも疲れちゃってさー。刹那ぁー癒してくれよー」
がばっと刹那に抱きつくライルに、アユーはその横っ面をぶっ飛ばしたくなった。だが刹那が見ているため、そんなこともできない。刹那自身がぶっ飛ばしてくれればいいのだが、彼は今菓子に夢中でロックオンの行動など気にも留めていない。
しかし、刹那に気付かれないように寄せた眉間のしわもすっ飛ぶような出来事が起きた。
「アニュー、これ美味しいな」
「え、ええ・・・っ!」
滅多な事では笑わない刹那が、微かな笑みを浮かべているのだ。しかも頬にカスタードクリームをくっつけているというオプションつきで。
(か、可愛い・・・その顔は反則ですよ)
すぐさま机に突っ伏してバンバン叩いて悶えてしまいそうだ。ライルを見れば、彼も顔を伏せて震えているから、同じ事を思っているんのだろう。
(今すぐぎゅーって抱きしめて、わしゃわしゃーって撫で回したい・・)
短い黒髪を撫でたら、きっと気持ちがいいのだろう。刹那が気持ちよさそうに目を細める姿を想像して、またしてもアニューは身悶えそうになった。
「あ、刹那クリームついてるぜ」
「? どこに?」
ライルが頬を指差すが、刹那は上手く拭えない。そんな姿も可愛らしいなぁ、とアニューが油断していたとき。
「ほら、ここ」
ぺろり、と。
ライルが刹那の頬のクリームを、その舌で舐め取った。何をされたのか良く分かっていない刹那と、勝ち誇ったようにニヤリと笑うライル。それが目に入った瞬間、無意識にアニューの右手が動いていた。
落雷が落ちたのかと間違えるほど盛大な音が響き、ライルは数メートル吹っ飛んでいた。
「すみません、虫がいたので」
突然アニューがライルに平手を食らわせた事に怯えた刹那を誤魔化すために、アニューは微笑みながら刹那の口に菓子を突っ込んだ。もごもごと口を動かす刹那の肩に両手を置き、「いいですか」と語りかける。
「男はみんな狼なんです。油断しちゃ駄目ですよ」
「・・・・俺も男なのだが」
「刹那は別です」
笑顔できっぱりと言い切るアニューになぜか恐怖を感じ、わけかわからないままも刹那はとりあえず勧められた菓子にパクついたのだった。
男は狼なのよ
しろくま様より、『ライ刹+アニュ刹でギャグ』でした。
アニューが別人になってしまってすみません。アニューファンの皆様、本当に申し訳ありませんでした(ジャンピング土下座
でも楽しかったです。黒アニューとても楽しかったです。