*帝人の両親を捏造しています











 「さて電話越しとはいえぼくの両親に挨拶するわけですけど、今のお気持ちはどうですか、臨也さん?」


 「一晩中娘さんを俺にください的な台詞考えて寝不足な俺にそれを聞く?」


 「面白いくらいくっきり目元にくまができてますねー。電話にして良かったですね」


 「全くだよ・・・・・て、帝人ちゃん、その右手の電話はなんだい? なんでそれ通話中ってなってるの? なんでスピーカーホンって表示されてるの?」


 「ぼくの実家以外のどこに繋がってると思ってんですか?」


 「装備確認せずにいきなりボス戦に突入するキミにびっくりだよ! すでに俺のHPは真っ赤だよ!?」


 「気合で回復してください。もしもーし、聞こえてるおかーさーん?」


 『聞こえすぎててさっきからお腹痛いわー。こんなに笑ったの久しぶりよ』


 「お義母さん順応早すぎじゃない!?」


 「僕の母ですから」


 『初めましてー、竜ヶ峰帝人のおかーさんでーす。帝人が彼氏と同棲するなんてびっくりだわ、さすが東京ね。相手はどんな人? かっこいい?』


 「顔は上物、収入はマンションとかが何個も買えちゃうくらい、でも性格が最悪。面倒みようなんて人、ぼく以外いないんじゃないかな」


 『あらあら、帝人も大変ねえ』


 「まあね。じゃ、そういうことだからぼく住所変わるよ」


 『はいはーい、後でメールでもしてちょうだい。あ、お父さんが初耳だよなんて俺に言わないのって顔でこっち見てるけど話する? しちゃう? 舅と婿の修羅場やっちゃう?」


 「えー、でも話しても結果同じじゃん」


 『それもそうね。あら、お鍋吹き零れちゃうわ。それじゃあまたねー』


 「またねー・・・・・・なに固まってるんですか、臨也さん」


 「今の展開で固まらない方がおかしいよ!」


 「まあびっくりしますよね。うちの母、ちょっとおちゃめで」


 「今のをおちゃめで済ます? ていうか帝人ちゃん、さんざん脅かしといてこのオチはないんじゃない?」


 「別に脅かしてませんよ。お前にうちの娘はやらんってちゃぶ台ひっくり返すシーンがでてくるドラマを延々再生しただけじゃないですか」


 「それを脅しって言わないでなんて言うの!? なんでこんな面倒な嫌がらせを・・・・・」


 「そんなの、緊張してガッチガチになる臨也さんを見て笑うために決まってるじゃないですか」


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


























 臨也さんがかわいそうだったのでちょっと報われるその後(でも臨也不在)








 『おとーさん納得させといたわよ』


 「ありがと、お母さん。お父さん何て言ってた?」


 『帝人がいいならそれでいいって。そもそも私たちだって似たようなものだしねえ』


 「お父さんがお母さんに結婚前提で交際申し込んだの、18歳の時だったんだってね』


 『懐かしいわあー。それで帝人、どうなのよ』


 「臨也さんのこと?」


 『あら、相手の人臨也さんて言うのね。変わった名前』


 「娘に帝人ってつけた人に言われたくないと思うよ」


 『昔のことは水に流しなさい。それで、その臨也さんって人と一緒にいて、幸せになれそうなの?』


 「・・・・・・・・・・幸せには、なれなくても」


 それでも、と帝人は幸せそうに微笑んだ。母には見えないと、わかっていたけれど。


 「お母さん、ぼく、きっと不幸にはならないよ」


 それならいいわ、と囁く母の満足そうな声に帝人は泣きたくなった。お母さん、お父さん、ぼくは満足です、産んでくれてありがとう。