夏、真っ盛り。
孤立した無人島を拠点の一つとして使うCBの、この季節の悩みは唯一つ。
「「「「あ、暑い・・・・・・」」」」
いくら暑いといえど、室内にはちゃんとシャワー室やクーラーが完備してある。だが、各々愛機を整備する時だけは、どうしても外に出なければならない。それも長時間。
「なんなんだ、この暑さは・・・・」
「最近異常気象だとか騒がれているからね・・・仕方ないよ」
肌を焼きたくないのか、相変わらず愛用のカーディガンを羽織っているティエリアはともかく、中東育ちで暑さには強いはずの刹那さえダウンしてしまうほどの猛暑。
「おーい、お前らー。いいもん持ってきてやったぞー」
同じように暑さに辟易していたロックオンが、なにやら白いビニール袋を片手にやってきた。
そのビニール袋をひっくり返すと、中から出てきたのは色とりどりのアイスバー。
「ちょっくらひとっ走り行って買ってきたんだ。お前ら感謝しろよー」
わらわらとアイスに群がるマイスター達。ちなみに感謝の声なんてまるで聞こえない。
「ほーら、刹那。美味そうだろー」
どれにしようか迷っていた刹那の口に、ロックオンは半ば強引にミルク味を突っ込んだ。最初は眉を寄せていた刹那だが、冷たいアイスが美味しくて文句も忘れて食いついた。
「ロックオン・・・・まさかこの為だけにわざわざアイスバーにしたんですか?」
「欲望のままに行動するとは、マイスター失格だな」
アレルヤ(チョコ味)とティエリア(グレープ味)に軽蔑の視線を向けられたが、念願が叶ってテンションが上がっているロックオンは気にしない。
一方、最初は大人しくミルクアイスを食べていた刹那だが、苺味も食べたくなった。しかし、まだミルクアイスが残っている。
少しの間考えていた刹那は、ふいに大きく口を開けると、アイスバーに噛り付いた。
「!?」
そのままがりがりとアイスバーをかじり続け、ものの数分で間食すると、さっさと苺味を手にした。
「ロックオン、もう一本もらうぞ・・・・って、どうした? 腹が痛いのか?」
下半身(刹那は腹部だと判断した)を押さえてうずくまってしまったロックオンに刹那は怪訝な顔をした。隣でアレルヤとティエリアが何ともいえない顔をしているのも気になる。
「あー・・・・うん、彼は大丈夫だよ」
「そうか? ならいいが」
「あと、刹那。その・・・・アイスバーに噛り付くのはちょっと・・・・はしたないって言うか、可哀想っていうか」
「?」
「アレルヤ、知らないほうが刹那のためだ。刹那、冷たいからって食べ過ぎるなよ」
「善処する」
無知な少女はアイスバーを片手に整備中の愛機の元へと走り去っていった。
残された二人は、うずくまっているロックオンの対処に頭を悩ませたという。