消えてしまいたかった。
頭の中にこだまする、己の半身の嗤い声。人革連の兵士をなぶり殺しにしたときの、心の底から楽しそうな声が。
聴きたくなくてアレルヤは耳をふさいだ。無意味だと分かっているのに。
「アレルヤ」
顔を上げると、そこには相変わらずの無表情で何を考えているのかさっぱり分からない少女がじぃっと見つめていた。いつ部屋に入ってきたのだろうか。たぶん、ドアが開く音が聞こえないくらい、今のアレルヤは落ち込んでいたのだろう。
「せつ、な・・・・?」
のろのろとそう呟いた瞬間、銀の瞳からぽろっと涙がこぼれた。刹那がぎょっとするのが分かったので、慌ててうつむいて顔を隠した。
「ご、ごめん・・・・すぐ止まるからっ」
アレルヤの言葉とは裏腹に、涙はぼろぼろと流れ出して止まらない。
「あ、あれ・・・おかしい、な・・・」
「アレルヤ」
傍目から見ても分かる狼狽っぷりに刹那はため息をつくと、ひたすら目元をこすっているアレルヤをぎゅぅぅっと抱きしめた。
「っ!? ダメだ、刹那!」
「何がだ?」
アレルヤが顔色を変えて押し返そうとしたが、刹那は抵抗した。刹那だって鍛えているのだからそこそこの筋力はある。もっとも、アレルヤが本気で押し返したのならかなわないが。
「だって、ぼくなんかが君に触れたら君を汚してしまう・・・・・ぼくはこんなにも、汚れているから・・・・」
ぼそぼそと吐露されたアレルヤの考えに刹那はため息をついた。そんな理由で拒絶されたのかと思うと苛っとしたので、ぽかりと軽くアレルヤの頭を叩いた。
「う、刹那痛いよ・・・・」
「お前は馬鹿か? お前が汚れているのなら俺だってそうだろう」
呆れたように刹那はべしべしとアレルヤの頭を叩いた。アレルヤはといえば、ぽかーんとした顔で刹那をを見つめている。
「俺たちの手は血に染まっている。これからも染まり続けるだろう。だから、なんなんだ? 俺はそれを後悔したことはない」
「ぼく、は・・・・」
嗚咽交じりの、それでもなんとか聞き取る事ができる声でアレルヤは呟いた。
「ぼくは人でなしだから・・・・人間のように生きる権利なんて・・・」
「だったら、俺が与えてやる」
アレルヤは驚いて、刹那の赤褐色の瞳をまじまじと見つめた。強い光が宿った、とても綺麗な瞳だと思った。
「アレルヤ、お前には生きる権利がある」
きっぱりと言い切った少女を、アレルヤはひたすら抱きしめた。暖かい彼女の体温が愛しくて、ぎゅうぎゅうとすがりついた。刹那も拒まなかった。
「刹那、もう一つだけぼくにちょうだい・・・?」
耳元でささやいたそれに、刹那は一瞬驚いたような顔をした物の、先ほどと同じようにきっぱりと言い切った。
「・・・・許可する」
「ありがとう」
どうか、どうか、僕に彼女を愛する許可をください。