真っ白だけどほんのりピンク色のふわふわした物体。青やピンクや黄色の、星屑の欠片のような物体。
テーブルの上に置かれたそれらを凝視した刹那は、今自分を背後から抱きしめてソファーに座っている、それを持ってきた張本人であるロックオンを見上げた。
その視線に含まれた「これは何だ?」という問いかけに気づいたのか、ロックオンはニッコリ笑うと薄い紫色をした小さな欠片を手に取って刹那の口に放り込んだ。
「っ!?」
「刹那、吐き出すなよ。ほら、舐めてみな」
驚いて吐き出そうとした刹那の口を手で塞いで、いたずらっ子のような笑みを浮かべたロックオンは刹那を促した。
恐る恐る口内の異物を舐めると、舌が感じ取ったのは微かな甘み。
「甘い・・・・」
「だろ? 今刹那が食べてんのは『コンペートー』。で、こっちが『ワタガシ』。日本の砂糖菓子なんだって」
「砂糖? これが?」
確かに『ワタガシ』は鼻を近づけると微かに甘い香りがしたが、目の前にある色とりどりの欠片やふわふわの綿みたいなのが砂糖から出来ているなんて思えない。
「すごいよな、日本って。もっと極めればアメで動物なんかも作れるんだとさ。なんだっけ・・・『アメザイク』って言うらしいんだけど」
「東洋の神秘だな・・・・」
感心しつつ、刹那は『ワタガシ』にかぶりついた。口一杯に広がる甘い砂糖の味。先ほどの『コンペートー』よりも甘みが強く、少々甘ったるい気もするが甘いものが好きな刹那にはちょうどいい。もっと長く味わっていたかったが、口に入れた瞬間『ワタガシ』はあっという間に溶けてしまった。
「・・・溶けた」
「そりゃ砂糖だからな」
「『コンペートー』はこんなに早く溶けなかったぞ」
「それは・・・・製造方法の違いとか? ってお前もう『ワタガシ』全部食っちまったのか!?」
ちびちびと『コンペートー』を食べていたロックオンが残念そうな声を上げた。口の周りを砂糖でベタベタにした刹那はさらにロックオンの『コンペートー』にまで手を伸ばす。
「ダーメ、刹那食いすぎ! 俺だって『ワタガシ』食いたかったのに・・・・」
これを渡すか! と『コンペートー』を死守しようとしたロックオンだが、あっという間に刹那に奪われてしまった。甘いものが絡むとなぜか刹那は強くなる。トランザム機能でもついているじゃないかとロックオンは思う。
「あーあー口の周りベタベタにして・・・・」
ロックオンの分までたいらげて満足そうな刹那に呆れたようにロックオンは言った。まるでどこかのお母さんのようだ。
「俺も『ワタガシ』食いたかったなぁ・・・」
「お前の分まで俺が食ってやった」
「うわ、ひどい台詞」
刹那の態度はお前の物は俺の物とでも言わんばかりだ。まるでどこかのガキ大将のようだ。深〜くため息をついたロックオンの脳内に、ふといいアイディアが浮かんだ。
「刹那ぁ―砂糖菓子美味かったか?」
「甘いだけだったけどな。でも見た目も面白かったし美味しかった」
「へぇー。じゃ、俺もいただきます」
その台詞に刹那が首をかしげた瞬間、ロックオンの指が刹那の顎を捉え唇が重なった。
「ん・・・・」
うすく開かれた隙間から舌を入れてかき回す。鼻孔をくすぐる甘い香りに目を細めながら、ロックオンはちゅっと軽い音を立てて唇を離した。
「刹那すっげー甘い」
「・・・・当たり前だろ。砂糖菓子を食べたんだから」
「そうなんだけど、お菓子なんかよりすごく美味しい」
息を乱し顔を赤らめた刹那の唇をペロリとなめ上げて、ロックオンは再び刹那の唇を貪った。
君の唇は甘いお菓子