カランコロン、と少々うるさい鈴の音と共に「おめでとうございまーす!! 三等でーす!!」と言う威勢の良い声を刹那は呆然と聞いていた。


 「はい、これどーぞ」


 「・・・・・」


 渡された景品を、刹那はぼんやりと受け取ったのだった。









 「で、なんか説明なしに呼び出されたんだけど何?」


 突然、有無を言わさない口調で呼び出されたロックオンは刹那の部屋の玄関先で愚痴った。


 「てか、何だこれ?」


 「福引で当たった」


 玄関にどでんと置いてあるのは、最新のDVDレコーダー。


 なんでも、買い物に行った時福引で当てたらしいが、こんなに大きいもの、よくここまで持ってこれたなと感心する。


 「設置したいから手伝ってくれ」


 その為だけにわざわざ宇宙にいたロックンを呼び出した刹那の行動力に呆れるを通り越して感心する。


 設置と言っても、刹那の部屋にあるテレビの下にレコーダーを置くための棚を用意しなければならないし、そのためにテレビもどけなければならないし・・・・・。


 「こりゃ、けっこうな重労働になるな」


 ひとまず買い物だ、とロックオンは刹那を連れて出掛けたのだった。








 「終わったぜー」


 汗だくになりながらも、DVDレコーダーを設置し終わった時には、すでに夕方になっていた。窓から差し込む夕日がまぶしい。


 「あ、そうだ。刹那、せっかくだからなんかDVD観ようぜ」


 「構わないが、うちにはDVDなんてないぞ」


 「だと思ってさっき借りといた」


 ロックオンが取り出したのは、最近話題になっているホラー映画のDVD。


 それを見た瞬間、刹那がびくりと震えた。


 「ん? もしかして、刹那怖いのかー?」


 「そ、そんなわけないだろう!!」


 明らかに強がっている刹那だが、ロックオンはニヤニヤと笑いながら「じゃあ観ようぜー」とDVDをセットする。


 「あ、雰囲気だすために、部屋暗くしておこうな」


 「っ!? 勝手にしろっ」


 こうして、刹那はどんどんロックオンの罠へはまっていくのであった。









 DVDを観始めてから一時間。


 ソファーに座って余裕で観賞しているロックオンとは違い、刹那は必死に強がっていた。


 必死に「俺はガンダム。怖くない怖くない」とぶつぶつ呟きながら自己暗示をかけている。その表情が真剣そのもので、ぶっちゃけ今観ているDVDより怖い。


 (こんな時ぐらい、俺を頼ればいいのになー)


 恋人としては歯がゆい気もする。ロックオンは震える刹那の頭を撫でながら、心底そう思う。


 そんなこんなしているうちに、物語りも半ばまで進み、廊下を歩いているヒロインの足首を白い手ががしっとつかんで・・・・・


 「っ!?」


 さすがに怖かったのか、思わずロックオンに抱きつく刹那。ロックオンもやっと期待していた展開に胸が高まる。


 「大丈夫、俺につかまってていいから」


 耳元でそう呟くと、もうなりふり構っていられないのか、ぎゅぅと刹那はロックオンにしがみつく。


 ロックオンも、抱きついてきた刹那の身体の柔らかさとか、先ほどまで動き回っていたためかいたほのかな汗の香りなどを思う存分堪能して、あぁ、もう思い残す事はないと薄れていく意識の中・・・・・


 薄れていく?


 「え、ちょ、刹那ー?」


 ぎゅうぎゅうぎゅう


 よほど怖いのか、刹那の耳にロックオンの声は届いておらず、首に回された腕の力が次第に強くなっていく。


 「ちょ、刹那、首! 首しまってから、コレ!! 苦しいって!!」


 ヤバい。刹那は女性ながらにガンダムマイスターに選ばれるだけあって、そんじょそこらの女の子より力が強い。このままだと本当に意識が飛んでいってします。


 ひとまずDVDを消して部屋を明るしようと、ロックオンがテレビを見ると。


 「げっ・・・」


 思わず漏れたうめき声に、刹那もつられてテレビを見る。


 そこには、鏡から生えている無数の白い手と生気のないうつろな瞳が映っていた。


 「ひ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 叫んだ刹那の瞳からは、こらえきれなくなった涙がぼろぼろとこぼれた。


 さすがにこれ以上はヤバいと判断したロックオンは、泣きじゃくる刹那を抱きかかえると、急いで部屋から飛び出したのだった。


 「ひっく・・・ぐすん、ロックオンの、ばか・・」


 「あ、ほんと俺が悪かったって」


 「俺は・・・マイスター失格だ。あんな、ので・・・泣く、なん・・・て」


 ぼろぼろと大粒の涙を流し、そう嘆く少女をロックオンは抱きしめた。


 「大丈夫だって。お前はガンダムマイスターだ。お前以外の誰が、エクシアに乗るんだよ」


 エシクアの名を出した瞬間、刹那の瞳から涙が消えた。


 「ん、分かった。エクシアは俺のガンダムだ」


 (ん〜 やっぱ、刹那の中ではエクシア>俺なのかなー)


 そんなことを鬱々と考えながら、抱きかかえた刹那を宥めるロックンなのだった。