『幸せ』とは、難しいようで実は簡単なものなのだろう。


 だって、その人の価値観次第で、どんなものも『幸せ』になるのだから。






 「刹那?」


 呼びかけた少女からの返答はなく、こくりこくりと頭が揺れるだけ。


 もしかして、と、そぉっと顔を覗き込んでみると、案の定、刹那の瞳は閉じられ今にも眠ってしまいそう。


 あーあ、とロックオンは苦笑した。昼食後、二人でホットミルクを飲んでいる最中だったのだが。


 「連日ミッション続きで疲れたか」


 ひさしぶりの休日だからこそ、二人きりで満喫したかったのだが。


 ま、この寝顔を拝めただけで良しとしよう。


 くせのある黒髪をやさしく撫で、ロックオンは刹那の額に口付けた。


 「おやすみ、刹那」


 彼女の寝顔は、見たことのないくらい穏やかなものだった。