『アンタは何も変わらない』
自分はよくそう言われる。四年と言う月日を経て、他のメンバーは変わった。なのに、自分は。
相変わらずな君へ
ゆらり、と視界の端で揺れる青を確認すると、ティエリアは思考を閉じた。伏せていた顔を上げれば、真新しい制服に身を包んだ、愛しき女性(ひと)がいる。
「・・・・なかなか似合っているじゃないか」
「アンタもな」
女性とはいえ、ミレイナのようなスカートでは嫌がるだろうと推定されたため、刹那の制服は男性と同じズボンだ。四年前とは違い、男の格好をしていても女性だと判別できるほど彼女は成長していた。
「先ほどのは、わざとだな?」
「・・・・・・」
答えはない。刹那の知り合いらしい沙慈・クロスロードとかいう男は、刹那から銃を奪いその銃口を刹那に向けた。なのに、撃たなかった。
「君があれほど簡単に、しかも一般人に武器を奪われるわけがない。君は分かっていたのか? 彼が撃たないということを」
「まさか。ただ、なんとなく撃たない気がしただけだ。それに、素人なら撃っても大抵外れる」
「君はそんな根拠もない理由であんな事をしたのか。・・・・・・相変わらず、無茶をする」
「銃を突きつけられるのは慣れている」
その台詞にティエリアは沈黙した。彼女に一番最初に銃を突きつけたのは、ほかでもない自分だからだ。
ティエリアが渋い顔をすると、刹那はひかえめに笑った。その笑みは、以前と何ら変わっていない。
そう、彼女は変わったようで変わっていない。世界に対する苛立ちも。ガンダムへの想いも。喪った者たちへの悲しみも。戦争根絶の為なら、自分の命すら犠牲にする覚悟も。
自分も彼女も、何一つ変わってはいないのだ。
「・・・・・これからは、無茶は慎んでもらいたいな。あれは、心臓に悪い」
冗談交じりで言ったのだが、刹那は本気にしたようだ。申し訳なさそうに目を伏せ、「すまない」と呟いた。
ティエリアが伸ばした指先は、軽く刹那の頬に触れた。四年と言う年月で彼女のコンプレックスだった背は伸び、目線はティエリアと同じところまできている。
触れた指先から伝わる体温も昔と同じ。添えられた手も昔と同じ。触れると、すぐに目を閉じるのも昔と同じ。
そしてその唇に口付けるのも、昔と同じ。
相変わらずな僕から、相変わらずな君へ。