新しくガンダムマイスターとしてやって来た少年は、驚くことにまだ16歳だった。
年齢不明のティエリアを抜いて、ガンダムマイスターの中では自分が一番歳が近かった。それでも、3歳も年下なのだが。
最年長のロックオンが何かと世話を焼いているが、アレルヤもスメラギに良くするように言われ、それを実行してきた。
ただ、彼は驚くほど無愛想で人見知りが激しかった。
特に男性には懐かず、スメラギやクリスティナといった女性、特にフェルトとはよく会話しているようだった。
(・・・・・まだ16歳なんだし)
きっと女性のほうが安心するのだろう。ロックオンなどは「ハーレムってか。うらやましいぜー」など言っていたが。
きっと彼はここにくるまでにいろいろとあったのだろう。
CBのメンバーの素性は重要機密だがアレルヤは、常に敵意と殺意をまとい、人の気配に敏感すぎるほど反応する彼に、同族に対するような感情を持っていた。自分も、昔はこんな風だったのだ。
「あ、刹那」
ぶそっとした顔つきで歩いて来る少年に、アレルヤはにこやかに声をかける。刹那はアレルヤを見ただけで反応を返さないが、それも彼が来て数日でなれた。
「どうしたの?」
いつもと変わらない無愛想な表情。だがアレルヤは、刹那が困っていることが分かった。
肩に置こうとして伸ばした手に、刹那がびくっと身体をすくめる。その様子が、怯えた小動物のように思えて、安心させるように頭を優しく撫でた。
「どうしたの?」
「シャワーが・・・・壊れた」
常人なら聞き逃すだろう音量で呟かれたそれを、アレルヤはちゃんと聞き取った。そして考え込む。
「それは困ったね・・・直そうにも数日はかかるだろうし。あ、僕の部屋のシャワー、使う?」
なんとなく思いついた提案だった。刹那は一瞬驚いたような顔をしたが、数秒考え込んでこくりと頷いた。
「じゃ、着替え持っておいで。タオルは僕のところにあるから」
数分後、着替えを持ってやって来た刹那にシャワーを貸し、アレルヤはスメラギにシャワーのことを報告しに言った。
「スメラギさん、刹那の部屋のシャワーが壊れているみたいですよ」
「あら、そうなの? 刹那、今日の模擬戦で汗だくだから、可哀想ね。すぐにどうにかしないと・・・」
考え込んだスメラギに、アレルヤは部屋を出て行こうとして・・・・途中で振り返って、
「あ、今のところ僕の部屋のシャワー貸しているので、問題はありませんよ」
と言うと、さっさと出て行ってしまった。
なので、アレルヤは見逃してしまった。
それを聞いたスメラギの、呆気に取られた顔を。
「それって色々とまずいんじゃないかしら・・・」という呟きを。
アレルヤが部屋に戻ると、ちょうど刹那はシャワーを終えたらしく、脱衣所からばたばたと音がした。
「アレルヤ、タオルがない」
「あ、ごめん。渡し忘れてた」
刹那が来てすぐにスメラギのところへ行ったから、タオルを渡さないままだった。タイミング良かったなとか思いながらアレルヤはタオルを手に脱衣所の扉を開けた。
「ごめん、刹那。はい、これタオ」
思考が停止した。
脱衣所に居たのは刹那。それは間違えのないことである。
ただ、一糸まとわぬその身体は少年ではなく少女のそれで。
細いながらも女性らしいその身体からは、しっかりと胸の膨らみも確認できて。
「アレルヤ、すまない」
刹那は異性の前で全裸だいうのに、恥ずかしがるそぶりを見せるどころかトコトコと歩み寄り、アレルヤの手からタオルを取ると、扉を閉めた。
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!」
プトレマイオス全体に響きわたったアレルヤの叫びを聞いたスメラギは、
「あ、遅かったかしら・・・・」
と、アレルヤが遭遇したであろう場面を思い、急いでアレルヤの部屋へと向かったのであった。