お前の好き、は軽過ぎるとよく言われる。
お前の愛している、は重過ぎるとよく言われる。
だとしたら、俺はどうやってこの気持ちを伝えればいいのだろう。
せつな、と舌の上で転がしてみた。特に用もなく、ただなんとなく呟いてみただけのそれに、俺の腕の中で読書をしていた刹那がぴくりと反応した。
「や、特に用はないけど強いて言うのなら」
「言うのなら?」
「愛してる」
ちゅ、と頬にキスを送ると、みるみるうちに刹那の眉間にしわができる。
「えぇー、普通恋人からのキスで不機嫌になるかぁ」
「お前は」
眉間にしわを刻んだまま、刹那は俺をにらみつけた。
「軽い気持ちで、俺にそう言っているのか」
「まさか。世界の誰よりも刹那を愛してる」
「お前の愛している、は気に入らない」
吐き捨てるように、刹那はそう呟いた。
「お前は俺の名を呼ぶ時と同じように、それを俺に言う。そのくせ、世界で一番だとか言って、俺を縛り付ける。お前の愛は軽過ぎて重過ぎる」
泣きそうな顔で刹那は俺に言った。俺にしてみれば、どれも本当の事だ。
世界の誰よりも刹那を愛している。それを刹那にわかってもらいたいから、俺は頻繁に刹那に愛を語る。重過ぎる、軽過ぎる、なんて心外だ。
この愛に、重さなんて関係ないのだから。
「せつな」
名前を呼んで首筋に口付ける。そのキスも気に入らない、という顔をする刹那の頭を俺は撫でた。
「刹那のそばにいて、こうやって抱きしめて、キスして、愛しているってささやいて」
刹那の柔らかい耳朶を甘噛みすると、刹那はびくりと身体を震わせる。その仕草さえ、すごく愛しい。
「それって、何か問題でもある?」
「・・・俺、は」
俺のいたずらのせいで紅潮した顔で、刹那は苦しそうに叫んだ。
「お前にそう言われると心臓がおかしくなりそうだ」
「別にいいじゃん。おかしくなっちゃえって」
俺はとっくの昔に、おかしくなっているのだから。
刹那を背後から抱きしめたまま、俺はそのままベットへダイブした。刹那が抗議の声を上げるが、そんなの無視。
「刹那、愛している」
「お前は・・・」
何がしたいんだ、と呆れ顔で呟いた刹那の唇を、もうそんな台詞を言えないように封じた。
愛の重さ