「で、結局ロックオンと刹那は付き合ってるの?」
スメラギが何気なく聞いた言葉。
れにその場にいた全員は思わず無言で渦中の2人に視線を送っていた。
とりあえず、意識をしよう
広い食堂内に響いたスメラギの疑問。
楽しそうに答えを待ちかまえるスメラギとは逆にロックオンと刹那の顔は浮かばない。
浮かばないと言うよりは、ロックオンはなぜかあーだのうーだの言いながら刹那の様子を見ている。
対する刹那は特に気にした様子を見せずただ無言のまま、もぐもぐと美味くも不味くもない料理を租借している。
「いきなりどうしたんですか?」
何も答えない2人に変わってアレルヤが苦笑を浮かべながらスメラギに声をかける。
「ん〜、そろそろはっきり知りたいなぁって。」
ねぇ?とにっこり笑顔で聞いてくる割にはどこか脅迫の色が混ざっている。
横にはクリスとフェルトが座っているがスメラギを止める気はないらしい。
むしろクリスもフェルトも興味があるようでスメラギと同じように楽しそうに待っている。
「どうなの、刹那?」
ロックオンに照準を向けるより刹那の方がある意味素直だとわかっている。
だからこそスメラギはあえて刹那に聞いた。
「言っている意味が分からない。」
けれど刹那は迷うことなくきっぱり言い切る。
それでもその回答はスメラギの中では予想の範囲内だったようで苦笑しながら口を開く。
「恋人同士なのかどうかって聞いてるのよ。」
「…ストレートすぎですよ、スメラギさん。」
抽象的な物言いがわからない刹那に、スメラギはわかりやすいようにはっきり説明する。
それがあまりにもはっきりしていたためアレルヤは思わずツッコミを入れてしまった。
「だって遠回しに言ったって刹那は理解しないでしょ?」
それがわかっているなら最初の方は言わなくてもよかったんじゃ…と、その場にいた全員は心の中で思ったが誰一人としてそれを口にしない。
だって多分スメラギは刹那とロックオンの反応がみたいが為に言ったようなものだから。
それがなんとなくわかっているから誰も何も言わないのだ。
そんな中、スメラギの言葉にやっと意味が通じた刹那はスプーンを持ったまま何かを考えていた。
否定するか肯定するかくだらないと切り捨てるか。
ほとんどの人が否定するか、スメラギを一瞥してまた無言で食事が再会されるかのどちらか2択だと思っていた。
けれど予想に反して刹那はスプーンを握ったまま動かない。
「え、まさか考えてるの?」
何かを考え続けるように止まっている刹那にスメラギはつい声をかけてしまう。
普段あんなに(ロックオンが一方的に)見せつけているのに、何を考える必要があるのか。
いつも2人で一緒にいて、仲がよくて。
どこまでいってるのか知らないが多分普通の仲間以上の関係であることは明白なのに。
そうでなくても、刹那がそう認識してなければ否定の言葉が即答で出てくる。
けれどそれすら出てこないと言うことは少しは自覚があると言うことなのか。
そんな刹那が珍しくて、皆興味深そうに刹那を見つめる。
「……どう言う根拠で恋人同士と認識するんだ?」
前言撤回。
刹那は自覚云々で悩んでいたわけではなくただわからなかったのだ。
恋人という定義が。
「どう言う根拠って…ロックオン、貴方まさか告白してないの?」
明らかにそんなことはないということをスメラギは知っていたが一応聞くだけきいてみる。
けれどここまで鈍い刹那だからもしかしたら本気でロックオンの愛の言葉が伝わってないのかもしれない。
もしそうなら面白いを越えて、いっそロックオンが哀れだ。
「そんなわけないですよ。ちゃんと刹那には好きだとも、愛しているとも伝えてますよ。」
「言われてはいる。けど、お前は誰にだってそういう言葉を言うだろう。」
きっぱり言い切る刹那に、スメラギはあー。と言いながら言葉を詰まらせる。
ちなみにロックオンも。
確かに前までのロックオンだったら誰にでもそう言っていた。
だから否定したくても出来ないのが事実だ。
けれど今は違う。
ちゃんと大切な人を見つけた。
愛してると、伝えるにふさわしい相手を見つけていた。
それが刹那なのだが、自業自得というものは本当にあるようで全く伝わっていなかった。
どうフォローしようかと皆が悩む中フェルトがゆっくりと口を開く。
「でも、ロックオンは刹那のことを大切にしてるよ。」
静かなけれど凛としたその声に全員が耳を傾ける。
「すごく大事にしている。刹那だってわかるでしょ?」
問われた言葉に刹那は少しだけ戸惑った顔をしたが、ゆっくりと頷く。
その瞬間、刹那ぁ〜。と情けない声を出して抱きつこうとしてくるロックオン。
なんだか知らないが感動しているらしい。
けれど常よりスキンシップなるものが嫌いな刹那は嫌そうな顔をしながらロックオンを右手で制すと目の前にいるスメラギをみる。
「大切にされていることは…わかる。」
刹那だってそれくらいのことがわからないわけではない。
ただ刹那にとってロックオンの愛と言うものは家族に向けるものと同じだと思っていた。
そういう括りを大切にするロックオンだからこそ、マイスターの中で1番年下な自分を大切にしている。
年長者が弟妹を可愛がっているようなもの。
それがちょっとばかり大げさになっただけだと思っていた。
「…そうだろう?」
簡単に説明した刹那にロックオンはものすごいため息をついて俯いてしまう。
「いや、刹那が鈍いのはわかってた…わかってたけど…。」
ぶつぶつ言いながらうなだれるロックオン。
それを気にすることなく刹那は食事を続ける。
本当に哀れなことになってしまったロックオンにどう声をかけていいかその場にいた全員が悩んだ。
けれど刹那の食事が終わる頃、ロックオンはいきなりむくりと起きあがり、隣にいた刹那の肩を掴むと正面を向かせる。
何だ、と訝しげな顔をする刹那に構わずロックオンは口を開く。
「…刹那、俺はお前の事を愛してるよ。年下だからとか、マイスターだからとかじゃなくて、ありのままのお前を愛してるんだよ。」
甘く囁くように告げられる言葉。
ゆっくりと耳に入ってくるため、一つ一つの言葉を妙に意識してしまう。
いつも言われていることなのに。
今日に限っていつも以上に意識してしまう言葉に刹那は内心困っていた。
だってこんな感覚、一度として味わったことはないから。
「…何で、そう言える。俺はそんな気持ちわからない。」
「こう言うのは言葉で表すのは難しいんだよ。ただそうだな…俺はお前と一緒にいると安心するしお前が少しでも感情を見せてくれると嬉しい。何気ない一言とか行動があぁ愛しいなって思える。それに、もし出来るならお前とずっと一緒にいたいと思ってる。」
優しく微笑んで。
わかりやすくかみ砕いて言うロックオンの言葉に、刹那の瞳が揺れる。
「俺はこれからも刹那にだけ愛してるって言うよ。」
愛しそうに呟くから。
刹那は肩に置いてあったはロックオンの手を振り払うかのように思いっきり立ち上がる。
「…お前はそうまでして何がほしいんだ?」
「だから、俺は刹那が欲しいんだよ。まぁあえて言うならお前の心だけど。」
「あげられるわけがない。」
きっぱり言い切ると刹那は食べ終わったトレーを持ち上げる。
「刹那。」
さっさと立ち去ろうとする刹那に声をかければ、いつも通りの無表情でロックオンの方を振り向く。
「愛してるよ。」
いつもと同じ愛の言葉。
けれどいつもとは違うように聞こえる。
そんなことを頭の片隅で考えつつ、刹那はロックオンを一瞥すると何も言わずそのまま行ってしまう。
その行動に、まぁあいつらしいか。とロックオンは苦笑する。
「あんまり目の前でいちゃつかないでほしいんだけど?」
ため息をつきながら、それでもどこか楽しそうにスメラギは声をかける。
別にロックオンだってここが公共の場所で、しかも自分たち以外の人間がいることはわかっていた。
わかっていたうえで敢えて刹那に愛を伝えていた。
「まぁ刹那は愛だの恋だのに疎いからね〜。頑張りなさいよ、ロックオン。」
楽しそうに笑って告げた言葉には優しさが滲んでいて。
横にいたクリスやフェルトたちまでも頑張れ、と言うように微笑んでいる。
皆望んでいるのだ。
この不器用な2人の恋が実ることを。
それがわからないのは刹那だけ。
けれど今日で少しは意識してくれるのかもしれない。
そんな淡い期待を胸に抱いて、ロックオンは脳裏に愛しい子どもの姿を思い出し、優しく微笑んだ。
零の瞭様より、一万打記念として図々しくもリクエストして書いてもらった作品です。
にぶっ子刹那がとても可愛いです!!
瞭様、ありがとうございます!