暗く、必要最低限の物しか置かれていないので殺風景な刹那の部屋。その部屋のベットに俺は仰向けに倒れこんでいた。なぜって・・・・理由は簡単だ。いや、簡単にしたくないんだけど。本当はもっと複雑な理由が欲しいんだけど。
理由は、刹那がいきなり俺を押し倒したからだ。
事の始まりは、ミス・スメラギからの連絡だった。なんか苦笑いしながら「急いで来てくれない?」と言われて向かったものの、俺は嫌な予感がしていだんだ。
「で、来たんですけど・・・・・どういう状況ですか、これは」
俺の目の前には、ほんのり頬を染めてソファーに横たわっている刹那。うっすらと目を開けているが、なんか様子がおかしい。
「刹那に何をしたんですか?」
「うーん、ちょっとね・・・・」
「な・に・を・し・た・ん・で・す・か・?」
ずい、と俺が迫るとミス・スメラギは両手を振って「何も変なことはしてないわよ」と叫んだ。自分の恋人が何かされたなんて、冗談じゃない。
「ちょっとこれ試し飲みしてもらっただけよ」
そう言ってミス・スメラギが見せたのは、グラスに入った白く濁っている液体。顔を近づけると甘い香りがする。
「なんですか、これ?」
「甘酒よ。日本の子供向けのドリンクなんだけど、ためしに刹那に飲ませてみたら・・・・」
仮にも酒と分類されている物を未成年に飲ませないでほしい。だがミス・スメラギ曰く、米を発酵させた飲み物でアルコール分は少なく、酔う可能性は皆無に近いらしい。どんだけ刹那は酒に弱いんだ。刹那が成人しても飲酒だけはさせないようにしよう。
「刹那気に入ったらしくて、がばがば飲んでたのよ。私もちょっと調子に乗っちゃってどんどん飲ませていたら・・・・・こうなっちゃった」
いい歳をした大人が調子に乗らないでほしい。それで困って俺を呼んだというわけか。
刹那を部屋へと連れて帰るべく、俺はうとうととしている刹那の頬をぺちぺちと叩いた。
「おーい刹那ぁー、起きてるかー? 歩けるかー?」
「ぅん・・ロックオン・・・?」
俺の声に反応したが、すぐにむにゃむにゃと寝ようとしてしまう。これでは自力で歩いて帰るなんて無理だろう。
「あー、刹那は俺が連れて帰るんで、後始末頼みますよ」
「悪いわね、ロックオン。後はよろしく〜」
俺は刹那は抱きかかえると、全く悪びれていない顔でひらひらと手を振るミス・スメラギに見送られながら部屋を出た。
それからは何のアクシデントもなく、無事に刹那の部屋へとたどり着いた。それで刹那をベットに寝かせようとしてら刹那が目を覚ましたみたいで・・・・・
で、現状に至る。
俺にまたがっている刹那の目は完全に据わっている。何だこれ。つい逆の立場だったらいいのになぁ・・と思ってしまう俺の脳みそは終わっていると思う。
「ロックン・・・・・」
やばい。酔っているせいか、今の刹那はいつも以上に色気がある。ほんのり薄紅色に染まった頬に、暑かったのか(酒を飲むと体温が上がるからなぁ・・・)はだけた胸元、薄く開いた口元はとてつもなく扇情的で、今すぐ起き上がって刹那を押し倒してしまいそうだ。
がんばれ、俺の理性。恋人同士だろうが強姦は罪だ。それに酔っているのを襲うって駄目だろ。
俺が必死に押しこらえている事なんかこれっぽっちも知らない刹那は、ずい、と俺の顔に自分の顔を近づけた。
ちゅっ。
軽い、いつも俺がしているキスに比べたらお子様向けみたいな軽いキスだったが、それでも刹那から俺にキスしてくれることなんて滅多にない。そんな希少な出来事に少ない理性が対抗できるはずもなく。
「あー・・・・刹那、お前から誘ってきたんだからな」
ちゅっ、ちゅっ、とキスを繰り返す刹那には聞こえていない事をいいことに、俺はそういうことにした。だって、あながち間違っちゃいないだろ。
がばっと起き上がって刹那を押し倒すと、俺は刹那の唇に吸い付いた。
悪酔いハニー
(酔った君にも俺はメロメロ!)