休暇に入り、刹那とアレルヤは地上に、ロックオンとティエリアは宇宙に滞在することになった。


 ある日、地上にある自室でアレルヤが寝静まったのをいいことに、ハレルヤは夜中、刹那の家に転がり込んだ。


 休み中、何回も会っていたとは言え、それはアレルヤとのこと。


 ハレルヤは少々欲求不満だったのかもしれない。


 追い返すことも考えたが、まあいいか、と刹那もハレルヤを部屋にいれた。


 刹那はガードが硬く、ハレルヤが夜の営みに誘っても、断固として断り、適当にあしらっていた。


 次の日、特に何をするわけでもなかったが、雑誌を読む刹那の髪をくるくると弄ったり、ぼーっとしたり、有意義とは言えないが、それなりに恋人との休暇を楽しんでいた。


 だからこそ、刹那があまりに唐突に言ったから、最初は頭に届いて来なかった。


 「海に行きたい」


 「…は?」


 何に対しても興味を示さない刹那が、海に行きたい、なんて珍しい。


 「どういう風の吹きまわしだよ」


 「……何となく」


 「別にいいけどよ」


 「ほんとか!」


 刹那の瞳がキラッと輝き、少し頬を緩ませた。


 刹那のこういうところが、アレルヤもハレルヤも気に入っている。


 「それじゃ、今すぐ行くか」


 「あ、ああ」


 「でもお前泳ぐのか?」


 「見るだけでいい」


 「あ?なんでだよ」


 「海に入るのが怖い…」


 「ミッションでは普通に入ってたじゃねえか」


 「……でも」


 「―――あー…、分かったよ!んじゃ見るだけな!」


 「今から行ったんじゃ、夕方に着くんじゃないか?」


 「見るだけなら別にいいじゃねえか」


 「…それもそうだな」


 と、いう訳で海に行くことになった。


 部屋でダラダラ過ごすより、休暇を楽しめそうだ。


 電車に乗り、長めの道のりを楽しむ。


 アレルヤは出てこようとしない。ハレルヤに気を使っているのか、時折クスクス笑うだけだった。


 それはそれで不気味ではあるのだが。


 背中に夕日の温かさを感じ、後ろを振り返ると、橙色がかった海が見えた。


 「刹那、海」


 「え?」


 刹那が長めの髪をうねらせ、窓の外を見る。


 「…すごく……綺麗だ」


 「……、刹那、次の駅で降りるぞ」


 「ん、…ハレルヤ、手を握ってもいいか…?」


 「――ほらよ」


 手を差し出すと、小さな手を重ねてくる。


 その手の柔らかさを感じ、刹那は女の子なんだと再認識したと同時に、何となく恥ずかしくなった。


 外から流れ込む橙色の光に少しだけ感謝した。


 駅から歩くこと数分。


 波が満ち引きする海に着いた。


 人の姿はない。


 「わあ…」


 小走りで波打ち際まで駆け寄る刹那。


 先ほどより少しだけ暗くなった夕日が二人を照らしていた。


 「ハレルヤ、綺麗だ」


 「そうだな」


 「あまり、こういう景色は見たことがなかったから」


 確かに海も綺麗だった。


 波が交差し、橙にきらきら輝く。


 けして高くない波が、今の穏やかな感情を表しているようだった。


 それよりも。


 刹那の方が綺麗だと、そう思った。


 夕日を背に受け、波と戯れ、幸せそうに、嬉しそうに笑う顔。


 風をうけ、靡く髪。


 ワンピースから伸びた細い脚。


 それはまるで映画のワンシーンを見ているようで。


 「…綺麗だ」


 無意識に、そう言った。


 『珍しいね、ハレルヤ』


 「うるせえ」


 『刹那、綺麗だよね』


 「…ああ」


 『ハレルヤばっかいいな。僕も刹那と海見たいよ』


 「…今は、譲らねえぞ」


 『残念』


 アレルヤはそう言うと、会話するのを止めた。


 「ハレルヤ?」


 ふと気付くと刹那が目の前まで来ていた。


 常に無表情の刹那には珍しく、その口元は上がっている。


 「――――別に、なんでもねえよ。刹那は色気がねぇなって思ってただけだ」


 「む…」


 「色気もねぇが可愛いげもねぇ。なんでアレルヤはこんなのが好きなのかね」


 「――ハレルヤは、俺が嫌いか?」


 刹那は、薄く笑ったまま、そう言った。


 この確信犯が。


 「さあな」


 言うと同時に、刹那を引き寄せ、キスを送る。


 舌を絡ませ、息も荒く、それでいても優しく。


 『意地っ張り』


アレルヤが頭の中で呟いた。














電波系ロジックの暁 李玖様より相互記念としていただきました。


 暁 李玖様が書かれる刹那がむちゃくちゃ可愛いです。もう何あの可愛い生き物!


 暁 李玖様、本当にありがとうございました。