ハレルヤ・ハプティズム。


 アレルヤの別人格だという彼に刹那が初めて会ったのは、ほんの数日前。


 それから毎日のように、彼は刹那の部屋にやってくる。


 突然やってきては、勝手に人のベットでごろごろしたり、刹那にちょっかいをかけたり、アレルヤと言い争ったり、唐突にアレルヤに代わったり・・・・


 なぜ来るかは知らないが、見ていてとても面白いと、刹那は思った。


 だから、黙って彼を受け入れることにした。


 「よう、刹那」


 部屋で雑誌を読んでいた刹那は、その声に視線を上げると、突然入ってきた人物を確認し、返事をせずに視線を雑誌に戻した。


 「何読んでんだ、それ?」


 突然横から雑誌を取り上げられて、刹那は不満げにハレルヤを睨んだ。


 「MC専門雑誌・・・お前、若い女がこんなもん読むなよ。ガンダム以外に趣味ねーのか」


 「うるさい、返せ」


 自他認める無類のガンダム好きである刹那の食指が、他のもの・・・・特に、ハレルヤの言ったような女性らしい物事に動くはずもなく、刹那の部屋にはMC関係の本や雑誌しか置いていない。


 「ったく、そんなに好きなのか。だったら、今度キュリオスに乗せてやろーか?」


 刹那がぴくんと反応した。


 「・・・・いいのか?」


 (身長差のため)上目遣いにそう訊く刹那の顔はとても乗りたそうだ。そんな反応を見せる刹那にハレルヤは面白そうに笑った。


 「別にいーぜ。まぁ、あのおかっぱあたりが反対するかもしれねーけど」


 「誤魔化す手段を考えておく」


 考え込んだ刹那の顔は実に生き生きとしている。ハレルヤはその顔を数秒眺めると、


 「刹那」


 「?」


突然呼ばれて振り返った刹那の唇に、ハレルヤの唇が触れた。


ちゅ、と軽い音を立てて離れていったそれを、思考が追いつかない刹那はぽかーんと見つめ、


「ごちそーさん」


やけに嬉しそうなハレルヤの顔面に、持っていた雑誌を投げつけた。


 「いでっ!?」


 「目標を捕捉、すぐさま駆逐する」


 「待て、目がヤベーし何より分厚い本の角で叩くのはやめろっ! 地味にいてぇんだよっ!!」


 必死に刹那の攻撃をかわしながら、隙を突いて武器(本)を叩き落とし、両手をつかんで壁に押し付ける。刹那の殺意やら怒気やらが混じり合った視線が痛い。


 「どういうつもりだ?」


 「どーもこーも・・・・自分の感情に忠実に従った結果だぜ」


 正直に言ってみると、視線に含まれる殺気の量が増えた気がする。


 「一回あの世へ旅立ってみるか?」


 「お前だったらマジでやりそーだな。それは勘弁」


 「だったらさっさと離せ」


 「や、もーちょいこの距離でお前の顔眺めてみいでっ!」


 思いっきりすねを蹴られ、思わず手を離した瞬間、刹那は部屋を飛び出してしまった。


 「いっつー しかも逃げられたし」


 蹴られた場所を押さえながら、ハレルヤは獰猛に笑った。


 「今回はこれで済ましてやるけど・・・・・・次は逃がさないぜ、刹那」








 他の誰よりもあの子が欲しかったから。


 さぁ、これからどうやっておとそうかな?