懐かしい、夢を見た。
まだ、俺が男のような格好をして、世界を相手に戦っていた頃の。
あいつと、始めてあった頃の。
「おかあさん、おかあさん」
舌足らずな声と共に身体を揺さぶられて、俺はぼんやりと目を開けた。急速に晴れていく視界の隅には、今年で5歳になる息子・ジュールの姿。
「おかあさん、おきた?」
「ああ、ジュール」
わざわざ起こしてくれたジュールの俺と同じクシャクシャの頭を撫でると、嬉しそうに俺の腹部へと抱きつく。
「まだうまれないの?」
「あと少しだな。楽しみか?」
「うん!」
二人目の命が宿った腹にジュールは頭を寄せて目を閉じる。まるで、そこにいる弟か妹の存在を確かめるかのように。
「ジュールはどちらがいい? 弟か、妹か?」
「うーん、えっと・・・・どっちでもいや」
「そうか」
俺もどちらでも構わない。出来るならアイツに似て欲しい。ジュールは容姿も髪や目の色も、全部俺そっくりだから。
「名前も、考えておかないとな」
ジュールの時も、あいつと一緒に悩みまくって考えた。結局、ジュールと名づけたのはあいつだったけど。
「おとうさんもね、たのしみだって。スメラギおばさんやフェルトおねーちゃんも、みんなたのしみだって」
みんな、ジュールを産んだ時祝福してくれた。特に女性陣は、よく子育てのアドバイスをくれた。本当に感謝している。
「たのしみだね、おかあさん」
「ああ」
子供らしい屈託のない笑顔を見せるジュールに、自然と俺の頬も緩む。
笑えるようになったのも、女としての幸せを手に入れられたのも、全部あいつのおかげ。
あいつが、俺を変えてくれた。壊すことしか知らなかった俺を、あいつが。
「あ、おとうさんだー」
嬉しそうにあいつに駆け寄るジュール。俺も、たまには動くか。
「おかえり」
笑顔でこう言えるのも、ぜんぶお前のおかげだよ。