ふわり。
まず、髪に。
ふわり。
次は、頬に。
優しく宝物に触れるような手のぬくもりは、確かに刹那が心を許した唯一の存在のものだ。
でなければ、トレミーの中でも最も他者の気配に敏感な彼女が眠りから覚めないはずがない。
ふわり。
次いで唇から顎、そして首筋に降りて来たぬくもりにくすぐったさを感じた刹那が、ようやくその瞼を持ち上げる。
「ん…アレルヤ、…?」
ぱちぱち、と瞬きをしてから、ぬくもりを与えた主を視界に映そうとした少女の目に飛び込んできたのは、金色。
「ハレ、ルヤ」
刹那が名を呼ぶと、目の前の男の口がニッと笑みを象った。
「よぉ、刹那。久しぶりだなァ?」
アレルヤの内にいる男は、シーツの中で刹那の身体を抱き締めて笑みを深くする。
「…んっ…」
久々に愛でる少女が可愛くてならないとでもいうように、ハレルヤは刹那の唇をちゅう、と吸った。
「…ハレルヤ、何かあったのか?」
普段見せる苛烈な色はその瞳の奥に今も垣間見えているのに、刹那に触れるハレルヤはどこまでも優しい。
掌からもキスからも伝わってくる、刹那を慈しむような触れ合いを求めてくるハレルヤは本当に珍しい。
「たまには、俺だってこんな気分になんだよ」
「ごまかすな」
刹那の小さな手が、ハレルヤの頬を撫でる。
ハレルヤは少女のぬくもりを深く感じようと、金の瞳を閉じた。
「………刹那」
「なんだ?」
「お前、痛くねぇのか?」
「いたい…?」
刹那に問いを投げ掛けたハレルヤは、ゆっくりと目を開け、少女の大きな澄んだ瞳と視線を合わせた。
「ハレルヤっ…」
しかし視線を交わしたのも束の間、ハレルヤは刹那の首筋に唇を落とす。
「んっ…ぁ…」
キスをした箇所を、ハレルヤは舌でぺろりと舐めていく。首の次は鎖骨へ、そして昨夜の名残で未だ露になったままの胸元へと、ハレルヤの唇は降りていった。
「こんなに吸い付かれて、痛くねぇのかよ?痛いなら痛いって言わねぇと、間抜けで鈍感で独占欲の塊なアイツは手加減しねぇぞ」
そこまで言われれば、さすがに刹那も気付く。先程からハレルヤが唇で優しく辿っているのが、紅く鮮やかに色付いたアレルヤの痕だということに。
「…大丈夫だ」
「身体中に痣残されてんのにか?」
「ああ。…アレルヤの印だからな」
いつになく刹那を気遣う様子を見せるハレルヤの頭を、刹那がきゅうっと抱き締めた。
「でも、ありがとう、ハレルヤ」
「……何がだ」
「俺を心配してくれた」
刹那がハレルヤの髪を指に絡めて言うとすぐに、ハレルヤが彼女の唇に優しく深いキスを落とす。
「んっ……ふ、」
穏やかに、けれど確実に少女の口内を己の舌で味わうハレルヤに、刹那は舌を絡め返すことで応えた。
「どうだ?俺様のキスは、気持ちいいだろ?」
刹那の唇を舐めながら、喉を鳴らして笑うハレルヤに刹那も微笑み返す。
「ああ。…こんなに優しいキスを、まさかハレルヤにしてもらうとは思わなかった」
「…アレルヤが、ちっこくてふわふわした身体に理性プッツンしちまったからな。労ってやんよ、お姫様」
ハレルヤが刹那の唇にちゅっと音を立てて何度もキスを送りながら言った台詞に、少女のすべらかな頬がやんわりと赤味を帯びた。
甘く優しい接吻はお好き?
miniature dollyの宮柴千里様より相互記念として頂きました。
我が侭なリクエストに応えてくださってありがとうございます! 優しいハレルヤが新鮮です。キスシーン盛りだくさんで非常に嬉しいです。
宮柴千里様、本当にありがとうございました。