スーパーで買い物なんて初めてした。隣で主婦がにんじんを手にどちらのほうが質が良いか悩んでいて・・・・・・みようみまねでやってみようと思ったけれど、どこをどう見て判断したら良いのか分からず、結局適当に手に取った物をかごに入れた。連れてきていたハロにやってもらえば良かったと思いついたのは、会計を終えてスーパーから出た後だった。


 「ハロ、つかぬ事を訊くが野菜の目利きはできるのか?」


 「デキル! デキル!」


 肩にかけたバックの中でハロがぴょこぴょこ飛び跳ねながらそう答えた。本来ガンダムの整備などに使用されるハロがなぜ野菜の目利きなどができるのか・・・・・どうせあの男が教えたに違いない。


 「マダツカナイ? セツナ、マダツカナイ?」


 「もう少しだ、ハロ」


 そう、この路地を曲がればもう見えてくるはずだ。ロックオンの・・・・・ニール・ディランディの墓は。










 「久しぶりだな、ロックオン・・・・・」


 小奇麗に整えられた墓。けれども、そこにニールはいない。形だけの、ただ彼が死んだという事を知らせているだけの、からっぽの墓。


 「お前の弟を、ライルをCBのメンバーにした。あいつはもう『ロックオン・ストラトス』だ」


 前回ここを訪ねたときには、まだ迷っていた。彼が残したものを、自分の勝手な理由で争いの道を歩ませていいのか。しかし、ライルもまたカタロンの構成員として戦ったっていのだ。そのことを、ニールは知っていたのだろうか。


 「俺たちは動き始めた。新しいガンダムも作られた。スメラギ・李・ノリエガも戻ってきた。なぁ」


 墓石は触れるとまるで氷のように冷たかった。刻まれた字を愛しげになぞり、供物として置いてあった花束のとなりに、スーパー袋を置いた。中から転がりでたのはアイルランド産のジャガイモ。


 「お前が好きだといっていたものを買ってきた。ほら、お前の手袋もある」


 バックの中から、生前彼が愛用していた皮手袋を取り出して置いた。他にもアイルランドの国花シロツメクサの花束などを置く。最後に取り出したのはバックの中で騒いでいたハロだ。


 「さすがにハロはやれない。こいつは『ロックオン・ストラトス』の相棒だし、まだCBには必要だから」


 ハロはぴょんぴょんと墓の周りを跳ね「ロックオン、ロックオン」と騒いでいる。


 「すまない、ロックオン。これらで我慢してくれないか。まだ俺はそっちにいけないから」


 再び動き始めたCB。自分もそこで戦わなければならない。まだ世界を変えてはいないから。まだ全てやり終えていないから。でも、ずべてが終わったあとなら。


 「俺がそっちにいくまで、待っててくれないか。必ずいくから・・・・・」


 膝を地に付き額を墓石に当てる。少しでもロックオンに近づきたかった。冷たい墓石の感触に心が震え目じりから涙がこぼれた。墓石の上を流れるそれは、ロックオンが泣いているようにも見えた。


 どれぐらいの時間そうしていただろうか。「カエラナイ? カエラナイ?」と騒ぐハロをバックに戻して立ち上がる。膝に土がついたようだが、少し払ったら綺麗に落ちた。


 「さようなら、ロックオン。また会う日まで」







 




















お題はカカリアさんよりお借りしました。